日本 2−2 ドイツ

いい試合だった。久しぶりに高い位置でボールを奪って早く攻めるという意思が選手の動きに現れていた。とくに守備は、必要な時に必要な場所で相手選手にプレッッシャーをかけて簡単にプレーさせず、ドイツがハーフウェイを越える頃にはしっかりと守備ブロックが構築されていた。少なくともこれまでのWCや先のアジアカップのような腰の引けた戦いぶりではなかった。


それでも問題点をあげるとすれば、やはり2点リードしてからの守備かなと。ジーコは裏のスペースに走りこむタイプの大黒とスピードのある玉田を起用したが、前線から強いプレッシャーをかけられる巻という手もあった。この辺りがジーコらしさなのだろう。


一般的に強豪クラブは、ボールの奪いどころが高く、中盤でボールを奪ってからのハーフカウンターを志向している。守備戦術が洗練された現代では、DFラインを下げたカウンター戦術を機能させるためには決定力とスピードを兼ね備えたFWが必要になるが、すべてのクラブがそんなFWを持たないし、日本にも同じことが言える。
ボールを奪うために攻守が切り替わった瞬間、前線からボールホルダーに強いプレッシャーをかける。1人目で奪えなくても、2人目、3人目の選手が少しでも高い位置でボールを奪うべくトライする。たとえボール奪取に失敗してもこの動きが結果的にディレイを成功させ、チーム全体でのリトリートに成功し、守備バランスを整える。
これまでの多くのゲームで、日本の守備は守備ブロックを構築することを優先しすぎて後方への一方通行だった。FW、OHはコースを切っても、ボールを奪うまでに至らなかったし、その意欲も希薄だった。全体の意識が統一されていないこともあったが、中盤と最終ラインの距離感が悪く自陣深くに引かされた形になり、攻撃時の反発力を失うことしばしば見受けられた。


この点については、日本の専門家の中にも中田英バイタルエリアから離れる動きをバランス面で批判する人がいる。自分も彼の動きが今の代表の中で浮いていることを書いてきたが、彼の動き方自体はスタンダードなものだとも今も思っている。
りばぽにモモ・シッソコという選手がいる。DHの選手だが、とにかく高い位置からボールのあるところに顔を出してボールホルダーにプレッシャーをかけ続ける。もちろん周囲のFW、OH、ときにはDFまでがその動きに反応し、高い位置でボールを奪おうとする。ボール奪取に成功すればハーフカウンターに移り、もう一人のDHのアロンソにボールがこぼれれば彼の展開力が生きる展開になる。
日本だと、最終ラインが中田英や前線の動きに合わせた距離感を保ち、前線からプレッシャーをかけて高い位置や福西のところでボールを拾う形。DFラインを下げるのはこういう動きの後で、ようやく中田英がフィットし始めたのかなという印象を受けた。もっとも自分が思い描く理想は、中田英以外のDHがつぶし役に回って、中田英がボールを拾って展開する形だけど・・・。


中田英を中心に書いてしまったが、彼をフィットさせたのは中村、福西、宮本ら周囲の頑張り。中村は守備で効いていた、そして攻撃でいい意味で消えていた。守備で頑張ったのでOHとしてはポジションが下がってしまうけれど、このゲームでは全体の流れがよく、後方から彼のスペースを活用しようとする動きがあった。どんな位置でも苦しい瞬間にボールを預ければ簡単に失わないし、ともすれば中村経由に偏りがちな攻撃手段が多様化する要因になっていた。
福西はこれだけ頑張れるのなら、普段からもっと動けるだろとw。以前ジュビロのスタッフが代表の福西を見て「あんなに走る福西を見たことがない」と冗談を飛ばしたらしいが、前後左右にカバーに走り回り、タイミングよく攻撃に参加する福西を本大会でも見られれば簡単に負けることはないだろう。
そして宮本。まあ高さでやられるのは覚悟していた。しかし代表ではギャップを大きく取る彼が、この日は前への意識が強く中澤、坪井の前に出てパスをカットする場面も。そういう守備を絶えずやる必要はない。少しでも相手に意識させれば成功で、相手の攻撃も遅れる。スポーツ紙がさかんにラインの高さについて中田英との考え方の違いを指摘していたが、ゲーム全体を通してうまくコントロールしていたと思う。


この試合、大方の予想に反して日本は2点をリードした。守備的になるのは理解できる面があるが、強いチームはきっちりゲームを閉めてしまう。攻勢に出た相手にある程度押し込まれることは仕方ない。しかしその回数や時間を少しでも短くする方法が、ジーコと自分の考えでは違っていた。
ラインが下がってしまうと、フィジカルに分のあるFWを自陣ゴール近くまで引き込んでしまう。もう少し踏ん張って全体をコンパクトに保ち、高い位置で勝負したかった。前線に守備のできるいきのいい選手を入れて、ボールの出どころを抑える方法もあったかなと考えるのである。
幸いドイツは中盤を省略して、日本の弱点の一つである高さ不足をダイレクトについてこなかった。この辺りがクリンスマンに変わったということなのだろう。しかしこの試合を分析するであろうオーストラリアやクロアチアは、どういうプランを立てるだろうか・・・。


ところでたとえアウェーに近い欧州で、日本がGLを突破し上位進出するためには、サッカーの内容で本場の観衆を魅了し、声援を受けを受けることが必要だと思う。コンフェデのブラジル戦が大会のベストゲームに選ばれ、日本の敗退が惜しまれたように。今日のゲームは、そんな可能性も感じさせてくれたのである。


(´-`).。oO(同時並行でみたイングランド面白かった...)