コンフェデ ギリシャ戦のテレビ観戦記

「ハイテンポな日本」と「力のギリシャ」という印象でしたが、この日の日本は「勝つべくして勝った」という言葉がふさわしい内容でした。

まずは、メキシコ戦では空振りに終わったプレスが機能したことが、完勝ともいえる勝利の大きな要因だったと思います。この日の日本はショート・カウンターを中心にした「カウンターのチーム」でした。ジーコはよく「ポゼッション」という言葉を口にしますが、その意図するところとは逆に昨年の欧州遠征など「カウンター」が出るゲームの方が内容が良いですね。(「カウンター」という言葉に違和感があれば、「プレッシング・スタイルのチーム」とでも言い換えてください)

ボールを高い位置で奪って、手数少なくゴール前に迫る速攻、単純だけど決定機につながりやすい攻撃です。日本が1タッチ2タッチでボールをつなぎ、ゴール前に殺到する姿に可能性を感じました。早めにサイドに預けて突破というよりは、中央のパスワークに最終ラインから押し上げた両SBが絡むというイメージだったでしょうか。

実はこの試合も目覚ましを叩き切ってしまい前半15分頃の地震に起こされたのですが、テレビを見るなり飛び込んできたのは、2列目の中村と小笠原が守備に走り回る姿でした。緒戦のメキシコ戦は「攻撃時には1トップ、守備時には3トップ」と言ってもよい程ちぐはぐな姿を露呈していましたが、この日の2人は攻守両面で見違えるような動きをしていました。

トップの2人も走り回っていたから、まあ面白いようにプレスがかかりました。メキシコ戦では明らかに中田英が空回りしていましたが、少しは彼が意図する守備に近づいてきたように受け止めています。中盤の高い位置でのボールを奪うとボール奪取に集まっていた選手がぱっと飛び散っての速攻、奪取できなくてもギリシャの攻撃を単調にさせてしまう。懸念されていたチビッコCBの不安が顕在化する前に芽を摘み取り、攻撃に転じる、そんな意図が十分に感じられました。

一方のギリシャは緒戦から3人メンバー変更があったからか、まったく精彩を欠いていました。昨年のEUROでは規律あふれるネチッコイ守備からの速攻が印象的だったのですが、プレスは緩くスペースはがらがら、おまけに裏のスペースまで開けてくれているという大サービス。日本のパス回しが冴えていたこともありますが、これで攻めれない方がおかしい程でした。

さすがに後半の選手交代でギリシャも少しまともになりましたが、前半からの悪い流れを変えるまでには至りません。もともと攻撃力が弱く、格上、格下関係なく接戦を演じてしまうギリシャです。本来のカウンターフットボールに徹していたら、崩すのが苦手な日本はこんな簡単にはいかなかったでしょう。

とはいえフィニッシュの精度以外では日本の良い面が目立ったゲームでしたし、必然的な勝利だったと思います。ただこれが日本の実力かというと、相手のスタイルに随分助けられたような気がしています。このクラスになるとさすがにゴール前に引きこもるようなチームはありませんが、プレスの厳しい相手にどう対処するかが今後の課題になりそうです。

あと個人的な趣味になりますが、小笠原と交代で遠藤を2列目で使ったのはよかったと思います。代表ではすっかり守備の人と思われがちですが、G大阪では前線の選手と絡みながらの攻撃センスはなかなかのものを表現していましたから。おそらくは大黒とのコンビよりも中田英を中盤の底に残そうという意図が優先されているのでしょうが、新たな選択肢になるかもしれません。


さて、幸いメキシコがブラジルに1−0で勝ってくれたので、準決勝に進出するためにはガッチガチの真剣勝負でブラジルに勝利することが必要になりました。
ブラジルは、南米予選のアルゼンチン戦では不本意な敗戦を喫し、今回メキシコにまで負けてしまいました。ここで日本に負けることなんて論外で、勝利するにも内容が伴わなければなりません。そうでなければラテン気質なブラジル国民が黙っているはずもなく、もしかしたら監督問題にまで発展するかもしれません。

それにジーコの前だと、普段にもまして必死にプレーするブラジルの選手たちです。そんなブラジル相手に日本はどんな戦いぶりを見せることができるのでしょう。メキシコ戦のような失望感を味わう腰が引けた戦いなるのか、それとも今日のような堂々と渡り合うフットボールになるのか。

自分的には、「ジーコと日本のフットボールの試金石」的な一番と感じています。とっても楽しみなゲームになりました。