極上の決勝戦

美しいゴール野洲の高いテクニックをベースにした組織戦術と、鹿児島実業の徹底的に意識統一されたサッカーが真正面からフェアにぶつかり合った。両チームが死力を尽くして体を張る攻防は、近年の決勝でも飛び切りの感動を与えてくれた。
野洲高校おめでとう!

野洲のテクニックが上回ったのか、鹿児島実業が警戒しすぎたのか。はたまた野洲が立ち上がりからロングボールを意識させてDFラインを下げたのが奏功したのか、前半20分過ぎから野洲が細かいボール回しで主導権を握る展開へと傾いていく。前半の鹿児島実業は準決勝で見せた出足の鋭さが影を潜め、セカンドボールを奪う機会が少なかった印象。
しかし後半に入って野洲のやり方に慣れたのか、鹿児島実業が徐々にゲームを押し返す。本来の素早い縦パスからサイドを崩す展開が、野洲のDFラインを下げさせて幾度もゴールを脅かす。野洲も時折鋭いカウンターをみまうが、流れは完全に鹿児島実業のもの。そしてその執念が実って後半戦へ。

野洲の決勝点は、延長後半終了間際のファイン・ゴール!プロ級のサイドチェンジにスタジアムがどよめいたかと思うと、ボックスの外でためを作り、最後は右サイドからのクロスにゴール前で合わせるだけ。完全に相手DFを崩した美しすぎるゴールだった。

近年、高校サッカーはユース組織に押されがちだと聞く。そのためか今年は、Jのある都道府県は国立に到達できなかったという声もあった。しかしこの決勝戦はそんな風評を吹き飛ばす極上の決勝戦だったと思うのだ。


一昨日のエントリで縦ポンなんて言葉を使ってしまった。でも鹿児島実業のそれは、DFがセンターサークル付近まできっちりビルドアップして、相手の裏やギャップを狙って楔をいれ、サイドを崩す。合理的でスピード感も十分という極上のものだった。

ただ、同じ高校生相手であれば通用する戦術もより高いフィジカルを有する世界を相手にするとどうなるだろうか。昨年のWYで結果が伴わないばかりか世界から酷評されたり、02WC以前のお隣の国の例を挙げるまでもなく、善戦に終わることが予測できる。

テレビが野洲レボリューションだとか大袈裟な言葉で煽っていたが、世界と戦えるフィジカルの強い選手たちこそテクニックと組織戦術に磨きをかけ、クリエイティヴなサッカーを目指して欲しいと願う。確かに勝負には甘くなるかもしれないけれど、世界では10代に才能を表す選手がいっぱいいるのだから。

(´-`).。oO(野洲もっと苦労すると思ってたけど、予想がいいほうにはずれた...)