停滞感

代表やJリーグの試合を見ていると時々そんな言葉を思い浮かべる。「10年前に比べて強くなっている。でも世界とのトップとの差は開き、下との差は小さくなった」、今はそんな風に感じている。

FIFAランキングは今や18位まで上昇、ELOランキングでも15位。数字だけ見れば世界に胸を張れる位置にいるのに日本をそこまで強いとは思えない。例えば代表の唯一の真剣勝負の場であるワールドカップ、今のまま出場してもグループリーグを突破する可能性は極めて低いと思う。もしFIFAランキングの上位国30ヶ国ぐらいでH&Aのリーグ戦を実施すれば、間違いなく日本は下部リーグとの入れ替え候補になるだろう。

自分は代表がボロボロに弱い頃から見ているので、多分に自虐的かもしれない。でも昨年末にメンバーが落ちていたとはいえ、ホームでドイツに内容のまったくない惨敗を喫した。為すすべもなく力負けしてしまったあの姿が、日本の本当のレベルではないかと考えている。フットボールは、相手より多いゴールを決めないことには、引分けることしかできない競技。今の代表には、この点で決定的に可能性を感じることができないから。

今回のWC1次予選で格下相手に苦労し、最終予選では中東の新興国バーレーンに苦しめられている。フットボールは少ない得点を争う競技なので力の差がスコアには現れにくいから、少し守備の戦術を整備すると格上の国ともそこそこの勝負ができる。ちょうど日本でJリーグが開幕しドーハの悲劇を迎えた頃のようにアジア各国は強化している。アジアカップも内容的にはよくはなかった。ロスタイムのゴールなどを見ていると日本も底力がついてきたなと思うけど、確実にその差は縮まっている。

数字を調べるまでもなく、今回のWC予選で日本の得点力は低下している。格下の相手にさえセットプレーに頼っているありさまだ。Jでも得点の中心は、外国人選手の個人技によるものが印象に残ってしまう。確かに自分もWC予選は結果が重要と書いてきたが、代表の選手が「内容より結果が大事」とコメントしているのを聞くとちょっと情けなくなってしまう。決定機が少なすぎるから。

監督がジーコに変わって、選手は自由を得た。ただ今のところその結果は、リスクを冒さないこじんまりとした怖さのないフットボールでしかないと思う。守備を安定させることは間違いではないし、例えばここでよくフリーランニングが(ほとんど)無いことを嘆いているが、バランスを崩さないという意味では正しい選択肢とも言える。

だけどリスクテイクなしにゴールは困難だ。決定的に欠けていると思う点は明確なコンセプト。もちろん展開や状況によって刻々と変化するものだけど、選手任せで形にするにはまだまだ日本は成熟していないのだろう。テクニックはあってもアイデアやそれを実現する力が不足しているのは、フットボールの歴史の差なのかなあ。

美しく攻撃的なフットボールが、必ずしも勝利を保証するとは限らない。ただトルシエ以降顕著なセットプレーに頼ったフットボールをあと5年も続けていれば、世界のトップとの差はますます開き、アジアの中でも平凡なチームやリーグになってしまうと恐れている。美しく攻撃的なフットボール好きという自分の好みは別にして、世界に伍して戦っていくためには、日本はもう少し攻守両面で攻撃的なフットボールを目指さないといけない時期に来ているのではないか。そんなことを感じている。