ジーコへの期待

北朝鮮戦のレビューは、あまりに不甲斐ない相手だったのでやめました。その相手にああいう戦いぶりの日本にも少しがっかりしましたが・・・。代わりに予選突破も決まりましたので、前から用意していたものを載せてみます。


もし1ヵ月後にWCが開催されたとしたら、日本のグループリーグ突破はかなり厳しいと思います。もしかしたら1年後の本番でも敗退するかもしれません。でもその時に「これが日本のフットボールだ!」というものをピッチの上で表現してくれたとすれば、自分は誇りを持ってその敗戦を受け入れることができると思うのです。

でも今の代表が負けても、とてもそんな誇らしい気持ちにはなれそうにありません。個人的な価値観にも関係しますが、現状の守備的な戦い方はどうも好きになれません(それをジーコは攻守のバランスと言っているからなぁ・・・)。「勝利、勝利」というだけで、アジア予選でさえ決定機の数が少なすぎます。目指すべき方向性がはっきりしないまま、目先の試合だけを考えて迷走しているようにしか思えないことが一番の不満であり、悲しいのです。

実はこれまでの代表も同じだったかもしれません。最初のフランスWC、「ゾーンプレス」という明確なコンセプトがあったのに、本大会では(監督は交代していましたが)守備的な戦術を採用してしまいました。2回目の日韓WCは予選こそ突破しましたが、トルシエは最後まで攻撃の形を見出せないまま現実的な戦い方に終始し、どこか不完全燃焼の敗退でした。


このブログでは度々「魅力的なフットボールという言葉を使います。その言葉を使うときに意識しているイメージは、オランダのようにどんな相手に対しても「自らのスタイルを変えずに攻撃的なフットボールを貫く姿勢」です。そういう点ではジーコの母国ブラジルもまた同じです。クラブであれば、バルサが伝統的にそういう考え方をしていると言えるでしょう。

彼らはどこの国やクラブと対戦する時でもフットボールはゴールを奪い合うスポーツだ」というスタイルを貫きます。守備の目的は「相手からボールを奪い、そしてゴールするため」であって、得点を与えないなどという消極的な発想からスタートしていません。確かに得点を与えなければ負けることはありませんが、そんなフットボールのどこが面白いのだと思うのです。

#この辺りの考え方は、どうしてもクライフの劣化コピーになってしまいます。そして今の日本の実力を考えると、勝利を望む声からかけ離れていることは理解しています。誤解ないように申し添えますと、イタリアのように一つの文化レベルにまで昇華されていると、それはそれで面白みを感じるのです。


一朝一夕にその国のスタイルが固まるとは考えてはいませんが、フットボール黎明期にあり未だ国民的なスタイルの合意のない日本では、代表の果たす役割はとても大きいと考えています。事実、クラブのサポなどコアでない人の関心は、ほとんど代表に集中しがちです。こういう時期に代表がどういうスタイルを追求するかは、とても重要なことだとも考えています。もしかしたら、この国のフットボールの将来像を方向づけるかもしれないのですから。

だからこそ自分は、ジーコが就任時に言った「魅力的なフットボールをお見せする」という言葉に期待をし、未だに忘れることができません(02WCで「自分が監督ならもっと上に行けた」とも言っていましたね)。南米の個人技を重んじるスタイルはともかく、ブラジルという国が常に攻撃的なスピリットで試合に臨む点には、かねてより共感してきたからです。

例えば目に見えるフォーメーションでいうと、ジーコの現役時代のブラジルは4−4−2でしたが、常に両SBがオーバーラップし2−4−4のようなフォーメーションで攻撃することを狙っていました。ゴールのために積極的にリスクテイクしていたのです。
ところが現在の代表は両WBが同時に前線へ飛び出すことがなく、絶えず一人は残って守備に備えています。オーバーラップのない4バックの変形のようでもあり、かつ最終ラインの中央で1枚下がって守るスタイルです。しかも中盤の底に2枚置いて、追い込まれないと積極的にゴールを狙っていきません(小野、中田英が入ると別ですが)。
時代が違うとはいえ、これではジーコカテナチオかと言いたくもなるのです(笑)

すぐにコンフェデレーションズ・カップが始まります。もちろん日本の勝利を望み応援しますが、現状の臆病なスタイルを変えるきっかけになるのなら、強豪国に一度チンチンにされてしまってもよいという悪魔のような考えも自分の中にあります。

まあチンチンにされるとさすがに凹むので内容で圧倒されるくらいが丁度よいのですが、その後でジーコがどうするかが興味ある点です。これまでのように1−0でも勝ちは勝ちというスタイルを変えずにいくのか、相手にゴールを許しても2−1、3−2のような勝利を求める内容に変わっていくのか。

ジーコは、J発足前に日本に来て土のグランドでプレーしてくれました。地方のがらがらのスタジアムでその姿を見たときには、涙が出そうになったことを覚えています。そして代表のプライドや勝者のメンタリティという日本人が苦手な意識の部分を強くしてくれたのもジーコです。日本の新しいフットボールの歴史と共に歩んできてくれたと言っても決して過言ではありません。

だからこそ、たとえ自分の好みの押し付けであることは重々承知していても、魅力的な攻撃フットボールを志向して欲しいと望んでいるのです。
最後にもう一人大好きなオシム監督の言葉を添えて終わりにします。

「サッカーを壊すのは簡単だ。戦術的なファウルをしたり、引いて守ったりして、相手のいいプレーをぶち壊せばいい。作り上げる、つまり攻めることは難しい。」